スマートなリーダーシップで世界が変わる!
~YOSHIKO'Sエッセイ<1月23日号>~
今日は、米国第44代大統領バラク・オバマ氏の就任演説について、
米国の教育関係者、人材育成のプロフェッショナルから寄せられたコメントを訳してご紹介します。
ちょっと長いですが、これでもごく一部。
アメリカ人が、どんなに興奮して、この日を迎えたかが伝わってきます。
スマートなリーダーシップで世界が変わる!
~MITのPeter Dourmashkin博士のメールから抜粋~
【まず最初に、MIT(マサチューセッツ工科大学)の物理学の教授、Peter Dourmashkin博士からのコメントを紹介します。博士はICTを活用した先進的かつ実験的な教育を行っており、そのレポートは私にとって貴重な資料です】
今日は、アメリカの歴史上、忘れられない特別な一日になった。
就任式を見ながら、ぼくは、まだほんの小さい子供だったころのことを思い出していたんだ・・・
・・・あれは1960年代の初めのころだったとおもう。
家族で、ニューヨークから2,500km離れたフロリダのキーウエストまで、ドライブしたことがあった。
そこは東海岸の中で、もっとも「南部」の香りが強い島だった。
せまい一車線の道を、泥を跳ねあげながらずっと走って、
「ディ-プサウス」(南部でもっとも保守的な地域)に入ったとたん、
ぼくは生まれて初めて「人種差別」というものを目のあたりにして、愕然とした。
店はどこも「白人専用」で、道路の脇では鎖でつながれた黒人の囚人たちが工事をしていた。
黒人は「トイレ」を使うことさえできなかった。
当時は公民権運動が盛んで、この旅のあと、ぼくは、いかに多くの基本的人権が、
「肌の色が違う」ということだけで認められていなかったか、知ることになる。
まだ幼くてナイーブな年ごろにしたこの旅は、ぼくのその後の人生を変えたといってもいい。
つまり、「すべての人は平等であるべきだ」というシンプルな社会正義がぼくの信条になったんだ。
たぶん多くのアメリカ人は同じような経験をしているだろう。
長い間、肌の色の違いは決定的で、白人は白人とだけ、黒人は黒人とだけつきあう、というのが普通だったから。
でも今はちがう。
道を歩いているときに、アフリカ系アメリカ人に呼び止められて、和やかに天気の話をしたりする。
ちょっと前までは考えられなかったこんなシーンが、ごく日常的なことになった。
彼ら(アフリカ系アメリカ人)と身近に接し、彼らの目や声の中に、
ある種の達成感やプライド、幸福感、素晴らしいひらめきを感じると、
長い人種差別の歴史もようやく幕を閉じ、
キング牧師のいう「promised land(約束の地)」に到達したように感じるときもある。
しかし、まだ残された課題はある。
ぼくらは「よりよい世界」を実現し、
ほんとうの「約束の地」にたどりつくために"Change"し続けなければならない。
オバマ新大統領の演説を聞いて最初に思ったのは、「ぼくはもう、古い世代の人間なんだな」ってことかな。
だってぼくらの若いころは、観念的なイデオロギー論争に振りまわされて、
実利的なリアリズムなんて、考えなかったからね。
過去40年間、このイデオロギー偏重が、世界中にさまざまな紛争を巻き起こした。
アメリカは過激なまでの一国中心主義になり、
その結果、イラクで多くの尊い人命が失われることになったんだ。
この極端に分裂した世界を修復できるのは、ぼくらの次の世代、
そう、バラク・オバマのような人物だ。
彼なら、理想を明確に掲げると同時に、ただお題目を唱えるだけではなく、
ビジョンを実現することに献身的に尽くすだろう。
オバマが今まで歩んできた軌跡は、差別や分裂のない政治を実現するための
学びの道のりだったといっていいだろう。
地域コミュニティーの運営からスタートし、
ハーバード・ロースクールで高度な政治手法を身につけ、
シカゴの政界に再登場、上院議員、大統領候補と、
地道だが、着実に経験を積んできた。
オバマ世代は、現在われわれが直面している、
宗教や人種やさまざまな利権でこんがらがった問題を、
現実的に解決するビジョンと能力を持っている。
オバマの登場で、今まで声高に論じられてきたことは根本的に変わった。
人々は、もはや「大きい政府がいいか、小さい政府がいいか」なんて議論はしない。
「ほんとうに役に立つ政府かどうか」という視点で判断するようになるのだ。
オバマの就任演説は、
アメリカも世界も、激しい嵐のまっただ中にいることを、はっきりと認識することから始まった。
彼は集まった市民に、
絶望することなく、今こそ、アメリカ人の誇るべきキャラクターである
「不屈のチャレンジ精神」で、世界のために大いに働くべきだと呼びかけた。
あらゆる人々を結びつけるこの強い一体感こそが、
アメリカの政治に新たな可能性を示し、アジアやヨーロッパの同盟国との協調だけでなく、
敵対していた国々との和解への道を切り拓くことになるのだ。
ぼくは、とくにイスラム諸国にも対話をよびかけ、
ユーラシアを分断している問題を解決しようとする、
オバマの大きさに、ほんとうに感銘をうけたよ。
今日は、新たなはじまりを祝う日だ。
スマートなひと組のカップルが、大きな問題を抱えたわが国と世界をリードしはじめた、
すばらしい日なのだから。
Yoshiko' View
オバマ大統領の就任演説は、眠い目をこすりながら、LIVEで見ました。
リンカーンとケネディとルーズべルトとキング牧師の「イイとこ取り」をした、
という評論家もいますが、
私がいちばん印象的だったのは、冒頭の、
I stand here today humbled by the task before us-----
の"humble"という単語でした。
(ちょっと日本語にすると、ニュアンスが伝わりにくいのですが・・・
辞書にでてくる「卑下する、屈辱をうける」というより、
謙虚な気持ちで尽くす、といった感じでしょうか)
初めてこのことばの重さを知ったのは、
著名な研修コンサルタントである
Dr.Ken Blanchard http://www.kenblanchard.com/
が主催するリーダーシップマネジメントのワークショップででした。
テーマは、
「あなたはSelf-Serving Leader(利己的で私服を肥やすことに夢中なリーダー)か、
それともServant Leader(人に奉仕することを喜びと感じるリーダー) か?」。
そのワークショップで最初に使ったテキストが、
次のマタイ伝の一節でした。
He who is GREATEST
among you shall be your SERVANT.
And whoever EXALTS himself
will be HUMBLED.
and he who HUMBLES himself
will be EXALTED.
アメリカの今までのリーダーは(政財界を問わず)Self-Serving Leaderが
多かったのかもしれません。
オバマ大統領はそれと一線を画すために、
あえてServant Leaderとなる決意と、
強力なチームビルディングを実現したいという願いを、
"humble"にこめたのでは、というのは私の思い過ごしでしょうか?
ちなみに、このときKenにサインをもらった
"The Servant Leader"のテキストはとてもステキなデザインで、
ときどき自分のセミナーの参考書に使っています。
添付しますので、その厳かな装丁をご覧ください。

ちょっと硬い雰囲気になってしまいましたので、
お口直しといってはなんですが、若い女性のコメントもひとつ紹介しましょう。
★ Changeの準備は万端だ!
ASTDのディレクターJennifer A. Naughton のメールから抜粋
【つぎに、ASTD(米国研修開発協会)の資格認定部門のディレクター、Jennifer A. Naughtonさんから。彼女はバリバリ、キャピキャピのキャリアウーマンです】
わたし、就任式のときにあの「モール」にいたのよ!
ものすごーい人の波にモミクチャにされながら、
「わたしは今、歴史的な場面に立ち会っているのね~」
という感動で、すっかり舞いあがっていたわ。
まわりの人はみんな、オバマ大統領のスピーチをきいて、
「未来への希望と夢と一体感」でワクワクしていたの。
「アメリカの偉大な歴史が、今、市民の中から始まる」って叫んでいた人もいたし、
とにかく、全員が異常なくらい興奮していたわ。
あのときの空気は、とても文章には書ききれないわ!
確かなことは、その場にいた人はみんな、
「Changeの準備は万端だ!」って自信をもてたってこと。
彼のリーダーシップはどうかというと、今のところはまだ未知数ね。
時間がたてば、はっきりするでしょけど。
今までの彼のやり方を見ると、偉大なリーダーになる潜在的な能力は十分ある、と思う。
今、彼が集中しているのは、
熟練した有能なアドバイザーを集めること、
彼らに的確に質問をして効率的に大統領に必要なノウハウを身につけること、
自分は決断力があり信頼に値する人物だと内外にアピールすること、
この3つね。
彼がとくに優れているのは、
人々の気持ちを高揚させ、
「大統領はわれわれの意見にちゃんと耳を傾けてくれるし、率直に語りかけてくれる」
という気持ちにさせる能力、
つまり卓越したモチベーション能力とコミュニケーション能力ね。
これって、私たちが長い間望んでいたけど、手に入らなかったもの。
彼はこの2つの能力を駆使して、
「がんばれば必ず明るい未来がくる」ことを、とても上手に伝えるのよ。
アメリカ国民は、とても慎重に、でも楽観的に、未来への一歩を踏み出そうとしているわ。
オバマ大統領は、まず社会のインフラ整備に再投資することを進めようとしているけど、
それによって雇用が創出され、経済も厳しいながら安定の方向に向かうでしょう。
でも目に見える効果が暮らしの中にでてくるまでには時間がかかるということも、
あのスピーチをきいた誰もがナットクしたと思うの。
わたしたちは、新大統領が「最初の100日間」になにをするか、息をのんで注目しているところ。
この100日間で、「オバマは本物かどうか」が、はっきりするでしょうね。
個人的には、素晴らしいリーダーとして力を発揮すると信じてるけど。。。
ところで、日本人は、どう思っているのかしら?
Yoshiko' View
彼女には、
「残念ながら、日本の政治家で、これほどの求心力のある人物は、いません。
政治家にこそ、リーダーシップ教育が必要ですね」
と返事をしました。
みなさんは、どう感じられたでしょうか?
また、"ICTで学ぶIDルーム"参加ご希望をたくさんお寄せいただきありがとうございました。
ただ今、新しいクラスルーム"Team Rocinante"(見果てぬ夢を追いつづけよう!クラス)のオープン準備を進めております。
IDクラスに参加ご希望の方は、learning@j-cast.comまで「IDルーム希望」という件名でご連絡ください。